あなたの姿なき声が

涙をちゃんと流せていたのなら

この手が冷たくなかったのなら

悲哀に呑まれた心でなかったのなら

あなたの強さに応えられたのだろう

優雅にしな垂れた優しい髪を撫でることも

俯きがちな微笑みを覗き込むことも

私の秘密を打ち明けることも

すべて、できたのだろう

そうして、あなたの姿なき声が響きだし

暗闇にいる私にさえ届くのだ

苦悶の故の歓喜があると

私の心へ、そう諭すように

駆ける、青空のもと

駆ける、青空のもと、堤の道

左にダム、右に木立

左にプール、右に川

ここも一つの沙汰の境

鼓動が弾む度、叫びたくなる

けれど、私一人ではない

叫びは鳥に任せよう

その代わり、心で静かに私は叫ぶ、世界にむけて

毎秒ごとの新境地

悔恨も羨望もなく、私は駆ける

私の呼吸は私のために

私の歩みは世界のために

淘汰による死

死がための法悦

ブラックミラー ランク社会

Netflixのオリジナル作品に「ブラックミラー」というものがある。イギリス製作のドラマシリーズ。世にも奇妙な物語に近未来という舞台設定を施したような感じで、一話完結なため見やすい。私が好きな理由が近未来に対する風刺を描いているところだ。現在でもSNSを利用したいじめや犯罪等、問題は多発している。テクノロジーの発達に人間の倫理観が追い付いていないのは誰の目にも明らかである。その現実と地続きな近未来、信じられない幸福が開発される一方、信じられない恐怖が誕生することを、この作品は警告する。永遠の愛があるならば、永遠の苦しみもまた然り、考えるだけでも恐ろしい現実が身に降り注ぐ可能性があるということ実感させてくれる。全話のうち8割ほどはバッドエンドだが、その逆を解釈できる話もある。その中に私が生涯何回も観返すことになるだろう回がある。「ランク社会」だ。ものすごく素敵な話だ。終わり方がこれ以上ないほどに美しい。人は複雑なものを避けようとする、簡略に済まそうとするが故、人としての感情に蓋をすることになる。なぜなら人の心は複雑なものだから。そして、わかりやすい社会の中で、普遍的なイデオロギーが形作られ、人の行動の豊かさが失われてゆく。そんな世界でこの話はどう進み、終わるのか、是非その目で確かめてほしい。ラスト、ある言葉を叫ぶことになるだろう。