哀愁

陰鬱な過去がある。それは私を侮蔑し、罵り、戦慄かせる。醒めない夢をみるかのように、取り留めのない想起と反芻の連鎖が私を捉えて逃さない。当時の悲哀と忍苦はあながち気づかぬもので、後になって遅ればせながら心に哀愁の楔を打ち始める。あぁ、この哀愁、この哀愁にこそ意味を添えたい、その過去が未来を繋ぐ一つの物語となってくれますようにと。私の過去が未来を創り、私の未来が過去を救う、そんな人生があったなら、私の物語は哀愁に満たされているのだろう。さんざめく太陽を寂寞させる雲のように、日没の光芒に焼ける街のように、頬をピンクに染めて伏見がちに微笑む君のように。